ルノー・日産アライアンス
- ケース

2002年5月29日水曜日、ルノー日産BV (RNBV)の取締役会が初めて開催され、ルノーSAと日産自動車という世界最大の自動車メーカー2社の提携の状況についての話し合いが行われた。RNBVは、ルノーと日産の提携や共同事業の全てに関する戦略を監督するため、その年の3月に設立された50対50の合弁会社であった。新会社は、「提携戦略の舵取りを行い、共通事業をグローバルレベルで監督する。しかも、それぞれの会社のアイデンティティーと文化を尊重し、事業運営には口出ししない」ことになっていた。両社の役員たちは、提携後の最初の3年間で、多くが成し遂げられたと考えていた。カルロス・ゴーンのリーダーシップの下で、日産は、財務状況を劇的に改善し、再度、世界の自動車産業における主要企業として、急速に頭角を現していた。さらに、社内レポートによれば、両社とも、2002年までに33億ドルのコスト削減とシナジー効果を達成するという当初の予測どおりに推移していた。取締役会の準備が進むにつれ、ルイ・シュバイツァーとゴーンは、両社の提携には困難な課題が待ち受けているとの思いを強くした。両社はこの先、さらにどの程度のコスト削減と、シナジー効果(特に生産と売上拡大の分野で)を実現することができるのだろうか。また、企業文化も国の文化も、また機能、地理的にもかけ離れた両社の従業員が共に働くうちに表面化してきた問題点に、RNBVの取締役会はどのように対処すべきなのだろうか。さらに突き詰めれば、両社は、「それぞれの会社のアイデンティティーと文化を尊重し、事業運営には口出ししない」で、うまくバランスをとりつつ、提携を深めることができるのだろうか。