The Case Method

【連載コラム】第2回 ケースの魅力は授業の魅力

 私たち日本ケースセンター(CCJ:Case Center Japan)では現在、日英合わせて約26,000のケースを扱っているが、大半のケースが一般のビジネス書籍やビジネス教材ブックレットとは異なり、読めば勉強になるという性格を帯びていない。読んでもダメなら、どうやってそこから学ぶのか。それは、当該のケースを用いた討論授業に参加して、討論から学ぶのである。だから、教育者がケースを選択する際には、ケースの文面から討論の様子をありありとイメージできた方がよい。

 とは言うものの、自分でもケースを書くような経験豊富なケース教育者でもない限り、ケースが討論に膨らんでいくイメージはなかなか湧かないだろう。討論のイメージが膨らまないという問題を緩和してくれそうなものは、ふたつ思いつく。ひとつはティーチングノート、もうひとつがそのケースが使われた討論授業への参加体験である。こうした理解に基づき、CCJの努力は自ずとティーチングノートと授業体験の充実に向かっている。

 ティーチングノートと授業体験の役立ち度について、私の独断でそれぞれを100点満点で採点してみると、ティーチングノートにも60点くらいは付けられるが、授業体験にはそれとは別格の85点をつけてみたい。ということで、ここからは点数を高くした授業体験に焦点を当てていく。

 CCJでは3ヵ月に1回、「ケースメソッド研究会」を開催している。開催回数はすでに35回を数えるロングラン研究会であり、その目的は「あるケースを用いて行う討論授業のデモと教え方の検討」である。つい先日も、青山学院大学ビジネススクールの黒岩健一郎教授がHBSケース「ゴディバ・ジャパン:地域で考え、グローバルに展開する」を用いて、デモ授業を行った。当日は12名のCCJ会員が参加し、黒岩氏の討論運営を手がかりに、このケースを用いた討論授業の可能性を検討した。ケースメソッドで教えようとしている人にとって、「ケースメソッド研究会」はたいへん有益な場であるはずなので、そのうちにぜひ一度参加していただきたい。今日のコラムで伝えたいのはこのことである。

 ケース「ゴディバ・ジャパン:地域で考え、グローバルに展開する」にはティーチングノートがなかったために、研究会参加者にとって黒岩氏の授業実演は一層貴重な情報源となった。参加した12名は早かれ遅かれ、このケースを用いた討論授業をどこかで試してみることだろう。そして、その授業に参加した人が、今度は別の場所で授業をする側に回っていく。こうして、研究会を契機にゴディバの授業が拡散し、結果的にしばらくの間はゴディバのケースの販売量が増える。

 私見ではあるが、魅力的なケースとは、ケースそれ自体が魅力源なのかと言うと、そうとも言い切れない気がしている。教育者や学修者を魅了するのはあくまでも討論授業なのであり、しかる後にそこで使用されたケースに光が当たる。国内ケース流通の責を担うCCJが、討論授業の流通と啓発に尽力したいと考える所以もそこにある。





第35回ケースメソッド研究会開催記録

https://casecenter.jp/event/entry-49283.html


Written by 竹内伸一

日本ケースセンター所長

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