Space BDは、日本の宇宙産業黎明期の2017年に設立されたベンチャー企業である。このケースは、草創期で見通が経ちにくい産業で、ベンチャー企業が、どのようにチャンスを捉えて成長するかという過程を描いたケースである。
ケースの主人公の永崎は、ビジネスの成功要因として「運」「縁」「恩」を重視する経営哲学をもっていた。そして、多くのキーマンと繋がり、彼らから事業アイデアや支援を得て起業に至った。また、この会社のビジネスコンセプトは「宇宙商社」であり、宇宙に関連する新規ビジネスを開拓することであった。会社設立後すぐ、JAXAから超小型衛星の放出や宇宙ステーション実験をする事業を受託した。これらは、宇宙開発や実験をしたい企業や研究機関と、宇宙ロケットでの運搬、衛星放出や実験の権利確保、そのための仕様検討や物品調達など、一連の必要な業務を結び付ける事業であった。その後も、SPACEX社のロケットからの衛星放出やタンパク質合成実験など、新分野にチャレンジし、会社は成長した。しかし、その道のりは順調ではなかった。永崎はその都度、組織の成長の課題や、経営者がチャレンジングな意思決定時に配慮すべきことなど振り返りつつ進んでいった。