マリオット・インターナショナル:シンガポールのホテル・ブランドにAIを導入する
- ケース
このケースは、デジタル化が加速するシンガポールで、マリオット・インターナショナルが自社のホテルブランドの革新とAI戦略の刷新に直面した2021年が舞台である。マリオットはシンガポールのホスピタリティ市場でシェア第2位で、1位のアコーホテルズグループが市場の主導権を握っていた。
2016年、マリオットは122億米ドルと評価されるスターウッド・ホテル&リゾーツ・ワールドワイドと合併し、世界最大のホテルチェーンとなった。合併前、スターウッドはホスピタリティ業界における技術革新のリーダーとしての地位を確立しており、これはテクノロジーを使って宿泊客により優れた宿泊体験を提供し、顧客ロイヤリティを獲得するというマリオットの目標と一致していた。例えば、スターウッドは、ゲストがチェックイン手続きを省けるモバイルアプリや、キーレスエントリーにモバイルデバイスを使用できるサービスなどに投資していた。マリオットもまた、デジタル化と革新に向けた取り組みを進めており、キーレスエントリーやスマートルームなど、宿泊客向けのテクノロジーを導入したパイオニアでもあった。同社はアリババ・グループとジョイント・ベンチャーで提携し、アリババの旅行サービス・プラットフォームであるFliggyを使った顔認証チェックイン・システムを試験的に導入した。このシームレスで便利な代替手段は、顔認識によるテクノロジーに敏感な中国人旅行者のニーズに応えようとするものだった。
一方でシンガポールにおいては、ホスピタリティ業界関係者の間で人工知能(AI)が普及するとともに、消費者のAIに対する信頼が高まっていることが、マリオットが戦略を見直すきっかけとなった。政府の推進支援に加え、チャットボット(デジタルコンシェルジュ)、サービスロボット、自動チェックイン/アウトシステムなど、宿泊客が直に接するAIソリューションの成功事例は、マリオットにとって、次のステップへの検討を促す状況となった。マリオットはシンガポールで宿泊客向けのAIを導入すべきか?その場合、どのAIソリューションを、どのホテルブランドに導入すべきか?